こんにちは。
カフェジンタ三条烏丸 オーナーの小野仁土です。
前回までは、カフェジンタの開業物語ということで、4回に分けてお届けいたしました。
私の自己紹介を兼ねているということもあって、内容はビジネス的視点よりは一人の人間としての35年間の軌跡ということで物語として書かせていただきました。
続いて次回からはてカフェジンタの開業から現在にいたるまでの流れをシリーズでお話ししていきます。
このテーマに関しては、カフェジンタがどのような事業方針で開業から今にいたるのかを、主にマーケティングの視点から解説していく予定です。
時系列でカフェジンタの変遷を辿りながら事業を分析をすることで、私がカフェジンタの経営の中で体験した失敗と成功を追体験することができます。
題して「カフェジンタ解体新書」です。
ただ単純に「何が失敗だった」とか、「あれをやって成功した」というような、要素の情報提供では、単なる読み物となってしまいますので、今回は、ビジネス理論を用いて少し水準の高い分析にチャレンジしようと思います。
それに先立ってご紹介するのが、今回のブログのテーマ「戦略ピラミッド」というビジネスフレームワークです。
私がこのビジネスフレームワークと出会ったのは、とあるビジネスセミナーを受講した時です。
そのセミナーは私にとっては大変有意義だったのですが、受講したのはつい最近のことです。
ですので、この知識は私の中でも、ホヤホヤの知識ということになります。
このビジネス理論を知らずに、展開してきたのがこれまでのカフェジンタです。
創成期から今に至るまでを、この戦略ピラミッドに照らし合わせて振り返ると、それはもう至らぬことだらけです。
- 最初のころは何がだめだったのか。
- 途中に打った施策のどこがよかったのか。
- 今何が足りないのか。
- 今後課題にどう取り組むべきか…。
- etc.etc....
我ながら、ビジネス理論の解説をするには、もってこいの好材料だと思います。笑
今回の記事では、次回からの「カフェジンタ解体新書シリーズ」に先駆けて、松下電器(現Panasonic)の事業を例にして、戦略ピラミッドを解説いたします。
できるだけシンプルに理解していただけるようにご説明いたしますので、しっかり最後までお付き合いくださいね。
もくじ
戦略ピラミッドとは
戦略ピラミッドとはMBAなどで学ぶビジネス理論の一つです。
左側の三角のフレームワークは物事を計画し実現する上での優先順位を表しています。
これが戦略ピラミッドです。
上の事項が優位にあり、下はその一つ上の事項に従うという関係にあります。
そして、右にあるリストは、戦略ピラミッドを細分化して展開していくための、要素ということになります。
こちらも同様に上の要素に従う関係性です。
あまり細かい話をすると分かりにくくなるので、今回のブログ記事の段階では、大まかに左のピラミッド図を抑えておいていただければオッケーです。
右のリストについては、次回以降の実際のカフェジンタ分析作業のなかで用いていきますが、意識しなくても理解できるように、書いていきますのでご安心ください。
Panasonic(松下電器グループ)成長に見る戦略ピラミッド
経営の神様と呼ばれた松下幸之助が一代で育て上げたPanasonicグループ。
その事業戦略は常に時代を先取りしていました。
その成長の軌跡を戦略ピラミッドに照らしてみることで、ピラミッドの各事項がどのように機能するのかを、理解することができます。
ミッション
ミッションは直訳すると「使命・任務・役割」です。
私は大義という言葉が一番当てはまるんではないかと思っています。
大義とは重要な意義ということです。
戦略ピラミッドでは、大義として使命や理念などの抽象的な概念がここに打ち立てます。
起業であれば、起業理念ということになります。
何のためにその活動を行うのかを深く掘り下げ抽象化してまとめることで、ミッションを打ち立てます。
何のためにというと「利益を得るために」と思ってしまいがちなのですが、これは大義ではありません。
なぜなら、利益は事業を存続させたり、拡大するための「手段」だからです。
ここで、松下電器(現Panasonic)の創業者、松下幸之助の掲げた企業理念をここに挙げてみます。
産業人たるの本分に徹し
社会生活の改善と向上を図り
世界文化の進展に寄与せんことを期す
Panasonicホームページより
惚れ惚れするほど素晴らしい大義ですね。
私たちを囲む様々な電気製品を製造するPanasonicですが、最初から大きかったわけではなく、最初はごくシンプルな配線器具からスタートしました。
その小さな町工場のような企業が世界を代表するエレクトロニクスメーカーにまで成長したのは、ミッションがしっかりと打ち立っていたからです。
松下幸之助は理念を社内に浸透させるために、徹底して力を注ぎました。
ミッションが社員に浸透することで、組織が大きな力を発揮し、成長した非常に分かりやすい事例です。
松下幸之助氏が亡くなって久しい今でも、そのアイデンティティはしっかりと継承されています。
ホームページを覗いてみると、今でも理念の浸透に力を抜かず取り組んでいることがよくわかります。
注目すべきことは、100年の時を経ても色褪せない普遍性の高さです。
戦略
戦略はミッションを具現化するための方策です。
もう少し具体的に表現すると、資源(戦力)をどこに配置して活動するのか、領域を選定することです。
松下電器が大躍進した1950年代は、テレビ・冷蔵庫・洗濯機など家電製品が「三種の神器」と呼ばれていました。
そんな憧れの生活をだれでもが手に入れられるようにすることを戦略に据えますが、実は松下が先行して「三種の神器」を生み出したわけではありません。
松下がとった戦略は、先行他社に学び、それを上回る品質で、尚且つ安価な製品を大量に市場に送り出すことでした。
松下が「マネシタ」と呼ばれる所以です。
松下幸之助にとってこの方策こそが「社会生活の改善と向上を図り、世界文明に寄与する」という大義を果たすために最良の選択だったのです。
戦術
戦術は戦略を実行するために策定する具体的な段取りです。
配置した資源(戦力)をどのような方法(仕組みや技術)で活動するのかを選定することです。
松下がとった戦術は、巨額の資金調達と投資による生産能力の最大化でした。
1955年からの5年間で、資本3倍、従業員数2倍、という凄まじい先行投資です。
マネシタと揶揄されるほど「真似」に徹した松下幸之助が「経営の神様」と呼ばれる本領がここにあります。
松下幸之助の経営哲学は「水道哲学」と言われます。
産業人の使命は貧乏の克服である。その為には、物資の生産に次ぐ生産を以って、富を増大しなければならない。水道の水は価有る物であるが、乞食が公園の水道水を飲んでも誰にも咎められない。それは量が多く、価格が余りにも安いからである。産業人の使命も、水道の水の如く、物資を無尽蔵にたらしめ、無代に等しい価格で提供する事にある。それによって、人生に幸福を齎し、この世に極楽楽土を建設する事が出来るのである。松下電器の真使命も亦その点に在る。
出典:wikipedia
こうした哲学に基づき、開発というビジネスプロセスは最小限にとどめ、生産能力の最大化に資源(戦力)を集中投下しました。
ポイントは良質で安価な商品を供給するための仕組み作り、それを直向きに取組む人作りです。
この戦術により見事に高い競争力を獲得し、松下電器は1955年から1960年にかけて年商4倍という大きな成長を遂げました。
この頃、昭和天皇・皇后両陛下が行幸で工場をご視察なされたことは、松下電器の成功を象徴する出来事と言えます。
実行
実行とはその名の通り、実務レベルに落とし込んだ作業そのものです。
組織や作業の実働状況を管理することです。
掲げたミッションも実行レベルまで浸透がなければ、絵にかいた餅となることを、誰よりも知っていたのが松下幸之助でした。
そのためには組織の基礎中の基礎である人材を育成すること以外にないと松下幸之助は考えていたに違いありません。
書店のビジネス書コーナーに行けば、松下幸之助語録のような書籍が沢山並んでいます。
多くの企業経営者が哲学を語る本を出版していますが、松下幸之助の書籍の多さは群を抜いています。
また、PHP研究所という出版社や、松下政経塾というリーダー育成を目的とした財団法人を設立するなど、徹底して教育にエネルギーを投じています。
ありとあらゆるメディアを活用し、徹底的に哲学や理念の浸透を図った行動力とその姿勢は、時代を経ても学ぶべきことの多さに驚かされます。
まとめ
以上、松下幸之助の経営の一端を例にとりながら戦略ピラミッドというフレームワークをご紹介しました。
松下幸之助のビジネス展開を戦略ピラミッドに照らし合わせて整理するとこうなります。
- ミッション:世界文明の進展に寄与すること
- 戦略:人々が求めているものを、品質を高めつつ安く大量に作り、社会全体の暮らしを豊かにする
- 戦術:良いものを大量に作ることを第一に考え、それを実現できる人を育て、仕組を作る
- 実行:あらゆる方法を用いて人に説く
正直、題材が偉大すぎて、関心が松下物語に奪われてしまいそうな勢いです。笑
確かに面白いし、為になることが多いですので、松下幸之助について研究してみることも、成功への一歩にはなります。
ただし、時代の背景が今とは異なりますので、今この時代に松下幸之助の戦略をそのまま用いても、成功は難しいでしょう。
ポイントはそこではなく、このブログ記事でお伝えしたかったのは、あくまで「戦略ピラミッド」です。
松下幸之助はミッション→戦略→戦術→実行と、ビジネスを展開する上で、「世界文化の進展に寄与せんことを期す」という信念の矢を貫きました。
信念の矢を貫き通し、戦略ピラミッドの展開がなされたからこそ、大きな成功に至ったということに注目していただければと思います。
もし、松下物語に関心が向いてしまって、戦略ピラミッドの理解が…と感じた場合は、信念の一貫性を念頭に置いて、もう一度読み返してみてくださいね。
それでは、次回からはカフェジンタの事業を戦略ピラミッドに照らして事業分析をしてまいります。
どうぞお楽しみに!
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